この社会に生きる私たち人間は、無意識のうちに仮面を被り、「私」という存在を演じている。本提案では、見慣れた日常の中に日常と非日常が同居する歌舞伎を上演する劇場を設計する。近代劇場構造の解体を行い、どこからが見世物なのか観客という立場が生まれるのか、一様な見方ではないからこそ実像と虚像のオーバーレイが生まれ、この場所・時を手掛かりに様々な仮面を持った「私」を肯定できる場を目指す。敷地は、都市の2面性の狭間に位置する御茶ノ水駅近郊の神田川沿い約230m。いまやこの地は都市の中心部に位置し、かつての都市の縁として河原者の自由な発想を受け入れ、文化的な想像が行われていた日常と非日常の境界であった川とは異なるが、変わり続ける都市を許容する不動の川は、ある種永遠に日常の縁であり、境界であることを示すシンボルと見立てることができるのではないだろうか。電車や橋、船、街路など様々な視軸が存在し、中心のない街に開いた劇場空間が誕生する。
対象地域:
外神田1丁目