
御茶ノ水駅から南へ、明大通りと茗渓通りが交わる交差点の一角に小規模なオフィスビルを計画する。
茗渓通りには飲食店や書店、画材店が軒を連ね、明大通りではいくつもの楽器店やカラオケ店が人々を誘う。比較的小規模な建物がひしめき合って形成される通りの風景は、独特な味と親しみをたたえている。壁や窓には色とりどりのサイン、歩道には植木鉢が並べられ、店が開けば立て看板や陳列棚が通りへ滲み出す。
これらが行き交う人々の意識や行動を絡めとり、建物と道の魅力的な関係を築いているのではないか。人の手がかかった「モノ」や、屋内のアクティビティが滲み出た通りにはぬくもりが感じられる。年月を経た建物の様相の変化も、単に劣化ではなく「味」として愛せるのは、そうした人の気配が隅々まで浸透しているからなのではないか。
人を、人の意識を絡めとり、建物内外の事物をやわらかく受けとめて繋ぐ、そんなオフィスビルを計画したい。今回の提案では、「Veil」と名付けた木の構造体によってすべてをデザインする。細い木材で構成される木のヴェールは建物全体を包み、心地よいオフィス空間と美しいファサードを創り出す。内と外はやわらかく隔たれ、やわらかく繋がれる。ゆらめく木の構造体は軽やかで親しみやすく、人やモノが絡まる余剰を備えている。
対象地域:
神田駿河台(JRお茶の水駅前)